殺人被告事件

事件の基本情報

裁判所名古屋高等裁判所
事件番号令和1(う)293
分類高裁
判決種別判決
判決文が挙げた条文刑法21条

この事件の代理人

判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。

争点(判決文より)

争点とはいい難い。所論
は採用の限りでない。
イ 所論は,被害者の血の飛沫状況,本件包丁が落ちていた場所,リビング
のカーペットのずれなどに照らすと,被告人と被害者が激しく動き,当初
の位置から窓の方へ移動し,揉み合う形になり,その際,被害者が前方に
倒れ込んで本件包丁が刺さった可能性があるという。
しかし,犯行現場の写真を見ても,カーペットのずれはわずかで,揉み
合いを推定するのは困難である。血の飛沫状況については,刺された被害
者がその後動いて付着した可能性も考えられる。本件包丁が落ちていた場
所も含め,結局,所論がいう可能性はいずれも抽象的な可能性に過ぎない
といわざるを得ない。所論は理由がない。
ウ その他所論は種々主張するが,いずれも理由がない。
事実誤認の論旨は理由がない。
第2 量刑不当の主張について
1 原判決は,保護者である被告人が当時12歳の長男を刺殺した結果は重大で
あること,受験指導の名の下,暴力的な言動からやがては包丁を体に当てるな
ど,独善的な行為をエスカレートさせ,何ら落ち度のない被害者に苛立ちを募
らせた末に激高して犯行に及んだという動機・経緯は身勝手で厳しい非難に値
すること,積極的に死の結果を望んだわけでなく,突発的犯行ではあるものの,
犯行態様は危険であることなどからすると,子に対する殺人の事案としては非
常に重い事案であるとし,犯行直後に被害者を病院へ運び込んだこと,さした
る前科がないこと,後悔の弁を述べていること等も考慮し,懲役13年の刑が
相当であるとした。
原判決は,実父による子の殺害という事案の重大性,動機・経緯の身勝手さ,
犯行態様の危険性を正当に評価しており,同種事案の中での位置づけを含め,
その量刑判断は妥当である。
2 所論の検討
ア 所論は,被告人が刃物を使って被害者を指導していたのは,被告人には特
定不能の広汎性発達障害があり,そのため被害者の立場に立って心情を理解
し,刃物を使う以外の指導法を考える柔軟な思考力が欠如していたためであ
るという。しかし,被告人に精神障害はないとする原判決の判断は専門家の
知見を踏まえた合理的なものであって正当である。所論は前提を異にするも
ので失当である。
イ 所論は,本件包丁を強い力で突き刺したとは認定できないのに,危険な犯
行態様とした原判決は不当であるというが,人体の枢要部である胸部に9㎝
もの深さで鋭利な包丁を突き刺す行為それ自体が危険であることは明らかで
ある。所論は採用できない。
3 量刑不当の論旨に理由はない。

主文(判決文より)

本件控訴を棄却する。
当審での未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入する。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。