事件の基本情報
| 裁判所 | 大阪高等裁判所 |
|---|---|
| 事件番号 | 令和3(う)956 |
| 判決日 | 2023-03-20 |
| 分類 | 高裁 |
| 判決種別 | 判決 |
この事件の代理人
争点(判決文より)
争点整理の結果は、「被告人が本 件公訴事実記載の行為をしたこと及び被告人が本件当時統合失調症の精神障 害を有していたことについては争いがない。争点は、限定責任能力か責任無 能力かである。」というものである。これを受け、原審公判においては、被告 人の精神鑑定を行った2名の精神科医(裁判員の参加する刑事裁判に関する 法律50条1項に基づく鑑定(以下、「50条鑑定」という。)を行ったA医 師及び起訴前鑑定を行ったB医師)の証人尋問を実施するなど、上記争点に 焦点を当てた審理が行われたところ、原判決は、被告人の責任能力について、 骨子、以下のとおり説示した。 ⑴ 本件では、責任能力の判断の前提となる精神障害の有無、程度、これ が犯行に与えた影響の有無、程度について、精神医学者の鑑定意見等が証拠 になっているところ、このような本件においては、鑑定人の公正さや能力に 疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用で きない合理的な事情(以下、「採用できない合理的な事情」という。)が認め られない限り、その意見を十分に尊重して責任能力についての判断すべきこ ととなる。 本件における精神医学者の意見としては、A医師及びB医師の意見がある ところ、両名は、いずれも統合失調症の治療経験が豊富で、かつ、精神鑑定 歴も多数あり、司法精神医学における高度の専門的知見を有する専門家であ ると認められる。 両名の意見には相違点があるが、A医師の意見が被告人にとって有利なも のであるから、検察官が立証責任を負うという刑事裁判の原則を踏まえて、 まず、A医師の意見について、採用できない合理的な事情があるかどうかと いう観点から検討を進める。 もっとも、両名の意見は、被告人が統合失調症にり患していること、その 症状が幻視、幻聴、思考伝播等であること、本件当時、被告人の統合失調症 が悪化していたことについて一致しており、これらの点については採用でき ない合理的な事情がないから、これらの点は前提として2つの相違点につい て検討を加える。 ⑵ 相違点①(症状軽快の有無及び悪化の時期)について A医師の意見は、㋐重視すべき事情である通院治療の経過や主治医の病状 評価を適切に評価していない点、㋑考慮に入れるべき起訴前鑑定における被 告人からの聴取内容を十分に考慮に入れて検討していない点、㋒症状悪化の 根拠として挙げている事情も意味合いが乏しいものばかりである点において 問題があり、鑑定資料の評価や前提となる事実の評価が合理性を欠いている。 このような評価となったのは、時々で変化する被告人の供述について客観的 な裏付けを欠く部分が多いにもかかわらず、そのことを十分に踏まえずに過 度に依拠したためと考えられ、全体的に鑑定判断の前提に問題があると言わ ざるを得ず、採用できない合理的な事情が
主文(判決文より)
原判決を破棄する。 被告人は無罪。
出典
本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。