現住建造物等放火被告事件

事件の基本情報

裁判所札幌地方裁判所
事件番号令和7(わ)866
判決日2026-05-19
分類民事
判決種別判決
判決文が挙げた条文刑事訴訟法181条1項、刑法25条1項、刑法42条1項、刑法68条3号

この事件の代理人

判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。

争点(判決文より)

本件の争点は、被告人の責)能力の程度である。このうち、被告人が本件当時
残遺型統合失調症にり患していたことは、後述するB医師の鑑定等から明らかで
あり、当事者間に争いはないが、弁護人は、被告人が統合失調症の影響で心神耗
弱の状態にあったと任張し、検察官は、統合失調症が本件犯行に与えた影響は限
定的であり被告人は完全責)能力を有していたと任張する。そこで、当裁判所の
判断を以下補足して説明する。
第2 B医師の鑑定内容
1 起訴前に被告人の精神鑑定を行ったB医師の鑑定の要旨は次のとおりである。
被告人には、本件当時、妄想や幻聴等の統合失調症の陽性症状はなく、陰性
症状(意欲発動性の低下、情動的、社会的引きこもり、易疲労感、ストレス脆
弱性等)が中心であり、その重症度は中等度であった。なお、本件犯行時にお
ける被告人の病態は、程度が急激に変化するようなものではなく、火をつけた
ときと119番通報したときとで変わりはない。
被告人は、本件当時、陰性症状による生活機能の低下を基底とし、復職への
不安や思うように活動できないといった自己肯定感の低さという悲観的な発想
から希死念慮を生じて本件犯行に結実したといえ、その点で統合失調症の症状
が本件犯行に影響を与えた。もっとも、体調や精神状態が悪く、辛くなって死
‐2‐
のうと思ったという動機の了解可能性は高く、希死念慮を抱くに至ったメカニ
ズムは、統合失調症の影響でストレスへの対処能力が低下していたことを除い
ては、一般的なそれと異なるところはない。また、発作的に自殺に至ることも、
統合失調症にり患していない者にもあり得ることであり、さほど特異なことで
はない。自殺するために放火することは過剰なようにも見えるが、経験上は特
別珍しいともいえないし、包丁による自殺に失敗した後に放火したという経緯
からすると、被告人なりに周囲への影響が小さい方法を選ぶなど、自己の意思
に基づいた合目的的な行動をとれていたといえる。被告人には、本件犯行時、
火をつけることが悪いことであるという認識はあった。放火による周囲への迷
惑にまで思いが至らなかったとしても、これは現実的な理解判断ができなかっ
たというより、希死念慮が強く、視野狭窄が生じていた(思考の偏りがあった)
ことによるものであると考えられ、希死念慮によって視野狭窄が生じることは
一般的にもあり得ることであって、陰性症状の影響はそこまで強くはなかった。
2 B医師の鑑定内容については、弁護人も信用性を争っておらず、重要部分に
おいて疑うべきところはない。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。