傷害致死、窃盗被告事件

事件の基本情報

裁判所熊本地方裁判所
事件番号令和6(わ)468
判決日2025-10-21
分類民事
判決種別判決

この事件の代理人

判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。

争点(判決文より)

本件の争点は、被告人の責任能力の有無及び程度であり、本件各犯行当時、検
察官は被告人に完全責任能力があったと主張し、弁護人は被告人に責任能力はな
かったから無罪であると主張する。
2 起訴前に被告人の精神鑑定を行ったE医師は、以下のとおり供述する。
診断結果は、軽度精神遅滞(知的障害)であり、行動上の機能障害がないか軽
微なものに該当する。行動上の機能障害とは、知的障害によって生じる行動上の
問題、例えば、適切な対処法などが選択できずに衝動的、攻撃的な行動に出る、
社会的に他者に害を及ぼすような行動がみられることを意味する。一般的に、知
的障害を有する者は、知的機能の低さに加えて社会生活への適応困難から心理的
葛藤状態に陥りやすく、適切な対処法を選択できずに感情興奮や攻撃的・衝動的
行動へと繋がってしまう傾向にあり、この傾向は被告人にも当てはまる。もっと
も、被告人は、WAIS-Ⅳ知能検査の結果が全検査IQ60であったことなど
から知的障害の程度としては軽度に分類される上、社会的なルール等を理解して
おおむね自立的な日常生活を送っており、本件犯行前の生活において知的機能の
低さのために大きな支障があったということはできない。さらに、被告人は、本
件各犯行前から、交際相手を主として自分より弱い立場にある者に対する暴力が
みられる一方で、勤務先の職員や通行人に対しては、立場や力関係、状況を考慮
して抑制的に行動している面がうかがわれる。そして、被告人は、判示第1の犯
行において、思いどおりにならない被害者の反抗的な言動に腹を立て、被告人の
怒りの感情を発散することや、被害者に被告人の指示どおりの行動をさせること
を目的に暴行を加えたものであるが、このような犯行動機は了解可能な域であり、
平素の被告人の気質や性格に対して大きな異質性はない。また、被告人は、本件
各犯行前から、被害者に対し、第三者の目につかない被害者方でのみ暴行を加え、
暴行によるあざが第三者にばれないようにするため、被害者に対し、外出時は長
袖・長ズボンであざを隠したり、あざ等について尋ねられた際には「転んだ」と
答えるよう指示していたところ、このような行動は、場当たり的で拙劣なもので
はあるが、被告人が考えつく範囲では目的に適合した合理的なものであり、被告
人は、一般常識の範囲内で、暴行についての違法性・反道徳性の認識を有してい
たといえる。以上によれば、本件各犯行について、被告人の低い知的能力の影響
があったことを完全には否定できないが、その程度は著しいとはいえない。なお、
被告人の療育手帳には、知的障害B1(中度)、S-M社会生活能力検査の結果社
会生活年齢は4歳9か月である旨の記載があるが、後者についてはあくまで社会
的支援の必要性を判断するための検査で、被告人の知能指数を出す検査ではない

主文(判決文より)

被告人を懲役7年に処する。
未決勾留日数中290日をその刑に算入する。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。