懲戒免職処分取消請求事件

事件の基本情報

裁判所静岡地方裁判所
事件番号令和5(行ウ)25
判決日2025-03-06
分類民事

この事件の代理人

判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。

争点(判決文より)

本件の争点は、本件運転当時のせん妄による認識障害の有無を中心とする本件
懲戒事由の懲戒事由該当性及び本件処分に係る裁量権の逸脱・濫用の有無であり、
これらに関する当事者の主張は、以下のとおりである。
(原告の主張)
⑴ 原告は、本件運転当時、せん妄で見当識及び記憶が障害された状態にあり、
自らがアルコールを摂取した状況にあることを認識することができない状態
にあった。
したがって、本件運転は、酒気帯び運転の認識を欠いていたもので、道交法
65条に該当する事実がなく、原告には、非違行為として評価することができ
る事由が存在しないことから、信用失墜行為があったとはいえないのに、本件
処分は、懲戒処分の要件を満たさないにもかかわらずなされたものとして違法
である。
また、県教委は、本件処分をするに際して、本件運転当時、原告がせん妄の
影響下、アルコールを摂取していることを認識できないままに運転したもので
あるということを考慮しておらず、懲戒処分の量定に当たっても、故意又は過
失の度合いに関わる重要な考慮要素となる上記事情を一切考慮しなかった点
において、裁量の逸脱・濫用の違法がある。
⑵ 被告は、原告が、本件事故前後、知人や同僚とのメッセージや本件代行業者
とのやり取りをできていたことや、飲酒の記憶を有していたことを指摘するが、
せん妄とは、何らかの原因により生じた急性の脳機能障害で、注意や集中、見
当識を保てなくなり、認知機能に障害が生じる疾患であって、見当識の保たれ
た単純酩酊又は複雑酩酊とは質的に全く異なる状態である。メッセージの送信
や自動車の運転、帰宅等は、手続記憶に基づいてせん妄による認知機能障害の
下でも可能な行為であるものの、原告が実際にやり取りした内容は支離滅裂で、
むしろせん妄の影響を受けていたといえるし、飲酒行為については、長期記憶
として定着していたものが、経時による血中アルコール濃度の低下によって想
起が可能になると考えられ、飲酒検知時に想起できたとしても本件運転時に想
起できたことを示すことにはならない。なお、原告は、飲酒検知時においても、
認知機能を完全には回復しておらず、飲酒検知についての記憶も有していない。
⑶ せん妄の原因としては、患者自身の要因のほか、薬理学的要因及び環境的要
因があり、本件では、花粉症用に処方されていたアレルギー薬のフェキソフェ
ナジンの摂取に加えて、たまたまアルコールもせん妄を引き起こした要因の1
つではあったものの、原告において、飲酒前に、それによって自らがせん妄状
態に陥ることを予見することはおよそ困難である。ましてや、原告は、本件運
転当夜、運転代行サービスに依頼して帰宅しようとしたのであり、自宅以外の
自宅近くの場所まで運転を代行してもらった後、そこから自宅まで自分で運転
して帰宅する行動を予測する

主文(判決文より)

1 静岡県教育委員会が原告に対し令和元年8月20日付けでした懲戒免職処
分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。