退職手当支給制限処分取消請求事件(通称 京都市立中学校教頭退職手当支給制限処分取消)

事件の基本情報

裁判所京都地方裁判所
事件番号平成22(行ウ)35
判決日2012-02-23
分類民事
判決種別判決

この事件の代理人

判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。

争点(判決文より)

本件の争点は,本件処分が,社会観念上著しく妥当を欠き,市教委が裁量権
を濫用したと認められるか否かである。
(1) 原告の主張
退職手当には賃金後払いの性格があること,本件条例13条の文理解釈か
らすると,懲戒免職処分を受けて退職したとしても,退職手当は全額支給さ
れるのが原則である。そして,退職手当の全部支給制限の適否は,民間にお
ける退職金不支給に関する裁判例で用いられる判断基準と同様,当該退職者
に永年の勤続功労を抹消してしまうほどの背信的な行為があるか否かによっ
て判断すべきである。
本件についてこれをみると,原告は,中学校の教員として行った熱心な教
科指導や生徒指導が評価され,教育実践功績表彰や教育功労者表彰を受ける
などの勤務実績があるほか,同和教育,生活指導,部活動の指導などでも多
大な成果を上げている。
他方,本件非違行為は,職務遂行と直接関連するものではない上,所在不
明となった原告の妻との関係に由来するストレスに,職務上の過大なストレ
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スが加わったことによるものである。本件非違行為の態様については,酒酔
い運転ではなく酒気帯び運転にとどまっている点,本件事故が物損にとどま
っている点,当初から自動車の運転を予定した上での飲酒ではなかった点な
どが有利に斟酌されるべきである。また,原告は,本件非違行為について真
摯に反省し,懲戒免職処分については争わず,本件事故の被害者に対する被
害弁償や罰金の納付も完了している。さらに,原告は,懲戒免職処分により
職を失い,現在は収入の少ないパートの仕事に従事しているところ,住宅ロ
ーンの教職員共済借入分約700万円の一括返済を請求されてこれを支払っ
た上,金融機関から借り入れた住宅ローン残額約1500万円についても
月々の返済を強いられ,経済的に困窮するなど,本件非違行為によって厳し
い社会的制裁を受けている。
このように,原告には有利に斟酌すべき事情が多々あるから,本件非違行
為は,原告の前記勤務実績,貢献を全面的に抹消してしまうほど信義に反す
るものではない。
したがって,本件処分は,裁量権を著しく逸脱するものであり違法である
から,取り消されるべきである。
(2) 被告の主張
公務員には法律による身分保障があることなどに鑑みれば,公務員に対す
る退職手当支給制限処分と民間労働者に対する退職金不支給とを単純に同列
に扱うことはできない。
従前は,懲戒免職処分を受けた退職者には当然に退職手当を支給していな
かったところ,平成20年に制度が変更され,懲戒免職処分を受けた退職者
に対しても退職手当を支給することが可能になった。この制度変更の趣旨は,
従前ならば,退職手当の全部が不支給となることに配慮していわゆる諭旨免
職にとどめていた事案において,退職手当を一部支給した上で懲戒免職処分
とする

主文(判決文より)

1 京都市教育委員会が平成22年5月31日付けで原告に対してした退職手当
支給制限処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。