事件の基本情報
| 裁判所 | 大阪地方裁判所 |
|---|---|
| 事件番号 | 令和5(行ウ)119 |
| 判決日 | 2025-02-13 |
| 分類 | 民事 |
| 判決種別 | 判決 |
この事件の代理人
判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。
争点(判決文より)
争点 (1) 争点1(原告に厚年法上の故意があったか否か) (2) 争点2(厚年法76条1項前段に除外規定がないことが違憲か否か) 4 争点に対する当事者の主張 (1) 争点1(原告に厚年法上の故意があったか否か) (原告の主張) ア 刑法上の故意と厚年法上の故意は異なること 刑法では、故意は構成要件に含まれ、違法性及び責任とは区別された概 念である。ところが、厚年法では、違法性や責任がない場合についても 故意がないものと解されており、厚年法上の故意は、違法性や非難可能 性などを総合的に考慮して判断されている。また、厚年法上の故意が刑 法上の故意と同一であることを定める規定もない(なお、この点に係る 最高裁判例や下級審裁判例はなく、学説も見当たらない。)。 したがって、刑法上の故意が認められる場合であっても、厚年法上の故 意が否定されることはあり得るというべきである。そして、厚年法76 条1項が絶対的給付制限の規定であること(これに該当すれば一切の遺 族給付が認められないこと)を前提とすれば、厚年法上の故意の有無に ついては、同項の趣旨に立ち返り、一切の遺族給付を認めるべきでない 事案かどうかを慎重に判断すべきである。 イ 厚年法76条1項前段の趣旨からの考察 厚年法76条1項前段の給付制限の趣旨は、①被保険者を故意に死亡さ せた者に遺族給付を支給することが人々の倫理観に反すること、②年金財 政の悪化を防ぐため、モラル・ハザードの観点から、保険加入者が保険加 入していることを利用して積極的に不当な利益を得ようとすることを防ぐ こと、及び③年金給付の事故となる偶然性が損なわれることを防止するこ とにある(堀勝洋「年金保険法(第5版)」297頁参照)。 これを本件についてみるに、①本件犯行は原告の精神疾患の強い影響下 で行われたものであること、うつ病の自分には介護ができないと精神的に 追い詰められた末の犯行であること、本件刑事判決において執行猶予がつ いていること、再審査請求において複数の参与が原告の請求を容認すべき との意見を述べていることなどからすれば、原告に遺族厚生年金を支給し ても人々の倫理観に反することはない。また、②原告に不正受給の意図は 一切なく、本件犯行の特殊事情からすれば、同様の状況を作り上げて不当 な利益を得ようとする者がいるとは考え難く、原告に遺族給付を認めるこ とがモラル・ハザードを招来する可能性はない。さらに、③本件犯行の際 に原告が精神疾患の強い影響により正常な判断能力を失っていたこと(特 に行動制御能力を欠いていたこと)を踏まえれば、年金給付の事故に求め られる偶発性(偶然性)が損なわれるということもできない。 以上によれば、本件において原告に遺族厚生年金の支給を認めることは、 厚年法76条1項の趣旨を踏まえても問題はなく、むしろ、
主文(判決文より)
1 本件訴えのうち、遺族厚生年金を支給する旨の裁定の義務付けを求 める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。
出典
本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。