事件の基本情報
| 裁判所 | 広島高等裁判所 |
|---|---|
| 事件番号 | 令和2(う)32 |
| 判決日 | 2020-09-01 |
| 分類 | 高裁 |
| 判決種別 | 判決 |
この事件の代理人
- 濵田隆弘(被告代理人)/山口県弁護士会
争点(判決文より)
争点整理の結果は,「客観的に,被告人が公 訴事実の態様でAを刺して傷害が生じたこと,被告人が本件当時統合失調症に罹患 していたこと,本件までのAの言動については,格別争いがない。これを前提に, 検察官は,被告人は本件までのAの言動に対する怒りや恐怖心から突発的に殺意を 抱いてAを刺したのであり,統合失調症の影響は受けておらず,完全責任能力であ ったと主張するのに対し,弁護人は,被告人は,統合失調症による作為体験に支配 されて被告人の意に反して被害者を刺さざるを得なかったので殺意はなく,心神喪 失であったと主張する。」というものである。 原判決は,殺意をもって刺突行為に及んだとする被告人の捜査段階の供述の信用 性に疑いを入れる余地はなく,行為当時に作為体験があったとする鑑定は,前提条 件を異にするものであって採用できない旨説示し,完全責任能力状態での殺人未遂 罪の成立を認めて被告人を懲役2年6月に処し,その刑の執行を4年間猶予する旨 の判決を言い渡した。 3 しかしながら,原判決の前記判断は論理則,経験則等に照らし不合理であり, 判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があるといわざるを得ず,破棄を免れ ない。 第2 原判決の内容等 1 原判決が認定した客観的事実 争いのある被告人の行為当時の主観面を除き,本件刺突行為前後の客観的な状況 についての原判決の説示内容は記録に照らし是認できるところであり,これを改め て整理して摘示すると,以下のとおりである。 ⑴ 被告人は,平成6年8月頃に統合失調症を発症し,平成31年3月当時も通 院を継続しながら,被告人方において,被告人の夫B及び被告人夫婦の長女A,長 女の子(以下「孫」という。)と4人で生活していた。 ⑵ Aは,適応障害やパーソナリティ障害の診断を受けて通院していた。被告人 は,かねてより,Aから,「バカ」「ボケ」等の暴言,髪を引っ張る,物を投げる, 蹴る等の暴力,孫の世話等の家事を押し付ける等の行動にストレスを感じつつも耐 え忍んでいた。 ⑶ Aは,平成31年3月5日から6日にかけて,被告人方において,被告人に 対し「お前は馬鹿か」等と罵り,その髪を切る,2階で使用していた電気ストーブ を1階まで引きずり落として壊す,被告人の通報で警察官が臨場すると包丁を持ち 出して自分の腹部に突き付ける仕草をする,B保管のトロフィーを破壊する,被告 人の首を締める,2階にあったCDラジカセをゴルフクラブで破壊して1階に落と す,1階台所にかけてあった被告人の姑の写真が入った額縁を破壊してナイフを突 き立てる,2階に置いてある布団に煙草を押し付けて焦がす,といった行動をした。 Aは,同月6日午後2時30分頃,Bが孫の迎えに行って家の中で被告人と二人 きりになると,被告人に対し,その手首にガラス片を近付けた上で,Bが酒を飲ん
主文(判決文より)
原判決を破棄する。 被告人は無罪。
出典
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