事件の基本情報
| 裁判所 | 福岡高等裁判所 |
|---|---|
| 事件番号 | 平成23(う)264 |
| 判決日 | 2011-11-02 |
| 分類 | 高裁 |
| 判決種別 | 判決 |
| 判決文が挙げた条文 | 憲法38条1項 |
この事件の代理人
- 知名健太郎定(被告代理人)
争点(判決文より)
本件の争点及び判断の分岐点について 本件の争点は,被告人の犯人性であり,本件では犯行の目撃者等の直接証拠はな く,被告人が捜査段階から犯行に関して黙秘していることもあって被告人の自白も ないことから,1審においては,関係証拠から認められる間接事実によって被告人 が本件放火の犯人であると推認できるかどうかが問題となった。1審判決は,上記 1のとおり,被告人が本件放火の発生時刻に近接した時刻に,放火現場からほど近 い場所において不審な行動をしていたこと(上記①,特に(ⅰ))を中心とする間接 事実に基づいて被告人の犯人性を肯定しているところ,1審判決が行った間接事実 の認定が是認できるかどうか,また,それらの間接事実に基づいて被告人が本件放 火の犯人であることについて合理的な疑いを超えた証明がなされていると認めた1 審判決の判断が是認できるかどうかが本件の判断の分岐点となる。 (2) 1審判決が認定した間接事実について 1審判決は,上記1のとおり,証拠から認定した(a)ないし(c)の事実から, (ⅰ)の一部を推認し,(ⅰ)と証拠から認定した(ⅱ)ないし(ⅳ)の事実から①の事実 を推測し,これに②,③(さらには④)の事実を総合して被告人が犯人と認定して いる。次のとおり,弁護人の主張を踏まえながら検討したところ,1審判決が,上 記(ⅰ)の事実に関して防犯ビデオに映った車両のうち,午前4時52分以外の通行 車両についても被告人使用車両と認めた点は,論理則,経験則等に照らして不合理 であって是認できない。 しかしながら,それ以外の間接事実の認定は,論理則,経験則等に照らして不合 - 4 - 理とはいえず是認できる。 ア 被告人が被害者宅のあるb方面に行っていた理由について合理的な説明がな いという点(上記(c)の事実)について 1審判決は,被告人が,本件当日は自宅に被告人と介護を要する被告人の祖母し かいなかったのに,あえて祖母を自宅に置いて午前3時ないし午前6時という時間 帯に被害者宅方面に行っていた理由について合理的な説明がないとしている。 これに対し,弁護人は,1審判決の上記認定が被告人の黙秘権を侵害しており, 1審の訴訟手続には法令違反がある旨主張する。 この点に関する被告人の供述状況をみると,被告人は,1審公判において,本件 当日の運転の有無に関して都市高速道路の領収書を見せられて質問され,都市高速 道路を使った記憶はない旨答えており,その記憶がない理由について問われると, 「状況的には初めてのマンツーマンの祖母の介護を私が責任を持たなければいけな いという状態で一杯一杯だったという認識しか,その日付を言われて,自分の中で 確実に表れてくるのはその部分ですね」と供述している。このように,被告人は単 に被害者宅方面に行った記憶がないと述べているに過ぎず,被告人が
主文(判決文より)
1審判決中有罪部分を破棄する。 本件公訴事実中現住建造物等放火の点について,被告人は無罪。
出典
本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。