殺人,覚せい剤取締法違反被告事件

事件の基本情報

裁判所福岡高等裁判所
事件番号平成29(う)82
判決日2017-07-07
分類高裁
判決種別判決

この事件の代理人

判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。

争点(判決文より)

争点は,被害者の死因,被告
人の犯人性,殺人の故意の3点であったが,原判決は,概ね公訴事実に沿う認定を
して殺人罪及び覚せい剤取締法違反(被害者に対する覚せい剤の使用)の罪が成立
することを認め,被告人を懲役16年に処した。
本件控訴の趣意は,弁護人岡崎信介作成の控訴趣意書及び控訴趣意書補充書に記
載されたとおりであるから,これらを引用する。論旨は事実誤認と量刑不当である。
以下,順に当裁判所の判断を示す。
第2 事実誤認の論旨について
1 被害者の死因
弁護人は,被害者の死因につき,体内から検出された覚せい剤が致死量に達して
いたことの客観的な証拠がない上,顔面や鼻孔部に布団が被さり,その上にBの手
足が乗ったことで窒息した可能性があるから,これを覚せい剤中毒によるものと認
定した原判決には事実誤認があるという。
そこで検討する。まず被害者の体内から検出された覚せい剤成分の濃度について
みると,司法解剖を担当したC医師は,確実な致死濃度とはいえないが,生理的反
応に伴う症状を生じる可能性が高く,覚せい剤中毒を起こした状態にあるという意
味で,これを「中等度レベル」と判定した。そして,このレベルでも死亡に至るケ
ースはあり,被害者が乳児で呼吸機能や循環機能が未熟なことから,その危険は成
人と比較して大きくなるとの見解を示した上で,被害者の臓器等にみられる解剖所
見からしても,同人の死因を覚せい剤中毒と認めることができるとの結論に至って
いる。この証言は専門的な知見に基づくもので,前提条件等に何ら問題は窺われず,
他の専門家証人による説明とも合致しているから,十分に信用できる。
そして,上記C医師は,窒息の可能性について,現場状況を加味せずにいうと完
全には否定できないものの,密閉性の高い方法で体全体をくるみ,外から空気の流
入がない状態におくなど,絶対に呼吸ができない非常に特殊な状況さえなければ考
えられない旨証言した。また,法医学を専門とするD医師,E医師の両名は,被害
者には窒息死を示す所見や痕跡が全くないとしてその可能性をより強く否定し,急
性覚せい剤中毒以外の死因は考えられないと述べている。これらの証言に疑問を差
し挟む要素は見当たらず,本件客室において非常に特殊な密閉状況が現出したと窺
わせる具体的な事情もないから,被害者が覚せい剤中毒による循環障害等により死
亡したとした原判決に事実誤認は認められない。
所論は,Bと被害者が同じベッドで寝た際,布団が被害者の顔面を覆い,その上
にBの手足が乗るなどして窒息死に至った可能性が考えられるという。しかし,被
害者に窒息の所見は認められないし,所論のいう経過は上記の特殊な密閉状況に当
たらず,C医師も死斑の状況からして被害者が鼻や口を布団等で塞がれたとは考え
難いとしているから,上記の結論は揺るがない。

主文(判決文より)

本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中90日を原判決の刑に算入する。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。