事件の基本情報

裁判所福岡高等裁判所
事件番号平成31(ネ)255
分類高裁
判決種別判決
判決文が挙げた条文国家賠償法1条1項

この事件の代理人

判決文から代理人弁護士を特定できていません。判決文に代理人名が記載されない事件も多くあります。

争点(判決文より)

争点及び争点に関する当事者の主張
本件における争点は,本件請求についての遅延損害金の起算日を肺がん診断
日とすべきか,労災認定時とすべきかである。
【被控訴人の主張】
⑴ 不法行為に基づく損害賠償債務は,損害の発生と同時に何らの催告を要せ
ず遅滞に陥るところ,被災者が石綿肺,肺がんや中皮腫などの石綿関連疾患
にり患したことによる損害は,これらの疾患を発症したことにより生じるも
のである。したがって,損害の発生時点は,被災者がこれらの疾患を発症し
た時と解するのが合理的である。そして,疾患発症の有無は医学的診断によ
りされることからすれば,これらの疾病についての診断がされた時をもって,
損害の発生及びその賠償債務の遅滞を認めるのが相当である。
したがって,本件請求についての遅延損害金の起算日は,肺がん診断日
(平成20年9月26日)か,遅くとも肺がんの確定診断日(確定診断のた
めの生検がされた同年11月7日)とするのが相当である。
⑵ 最高裁平成26年判決により是認された原審判決(大阪高裁平成25年1
2月25日判決。以下「大阪高裁平成25年判決」という。)は,石綿肺が
進行の程度が予測できない特異的な進行性の疾患であり診断が難しいことか
ら,石綿肺にり患した事実やその損害の質はこれらに関する行政上の決定が
なければ通常は認め難いとして,上記⑴の例外として,石綿肺にり患した者
の損害賠償請求の遅延損害金起算日を,確定診断日に代えて,行政上の決定
(じん肺管理区分決定)を受けた時と判断しているが,肺がんにり患した者
については,肺がんり患の事実は通常は医療機関の行う病理検査により確定
的に診断することができることから,上記⑴に従い,その損害賠償請求の遅
延損害金起算日を肺がんの確定診断日と判断している。このように控訴人の
和解方針の前提となっている大阪高裁平成25年判決の判断によれば,本件
請求についての遅延損害金の起算日は,肺がん診断日か,遅くとも肺がんの
確定診断日となる。
控訴人は,大阪高裁平成25年判決が肺がんにり患した者につき確定診断
日を遅延損害金起算日と判断したのは,労災保険給付の認定日が証拠上明ら
かではなかったためにすぎないし,びまん性胸膜肥厚にり患した者について
も行政上の決定があった日を遅延損害金の起算日と判断していることからす
ると,同判決は石綿関連疾患の病名にかかわらず,行政上の決定があった日
を遅延損害金起算日と判断していると指摘する。
しかし,同判決は,上記の肺がんにり患した者について,肺がんの確定診
断を受けた組織診のために手術を受けた平成24年2月2日を遅延損害金起
算日と判断しているところ,仮に同判決が肺がん患者についても行政上の決
定日を遅延損害金起算日と判断しているとすれば,同年12月以降に労災保
険支給決定がされたことが

主文(判決文より)

1 原判決を次のとおり変更する。
⑴ 控訴人は,被控訴人に対し,1265万円及びうち1150万円に対する
平成23年12月29日から,うち115万円に対する平成20年11月7
日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
⑵ 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,第1,2審を通じ,控訴人の負担とする。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。